取り崩しフェーズとは
積立で資産を築いたあとは、その資産を取り崩しながら生活する時期がやってきます。 老後の生活費にあてる場合も、早期リタイア(FIRE)で資産収入だけで暮らす場合も同じです。 ここでの最大のテーマは「資産が尽きないように、いくらまで引き出せるか」です。
4%ルールとは
4%ルールは、取り崩しの目安としてよく知られる経験則です。 ざっくり言うと「引退時の資産の4%を初年度に引き出し、翌年以降はその金額を インフレに合わせて調整していけば、30年程度は資産が尽きにくい」という考え方です。
これは1990年代に米国の大学で行われた研究(いわゆるトリニティスタディ)が基になっています。 過去の株式・債券のデータを使い、さまざまな取り崩し率で「30年後に資産が残っていたか」を 検証したところ、4%程度であれば多くのケースで資産が持続した、という結果が示されました。
裏を返すと、「年間支出の25倍の資産があれば、リタイアを検討できる」という目安にもなります (4%=25分の1のため)。
4%ルールの前提と落とし穴
4%ルールは便利な目安ですが、いくつかの前提に注意が必要です。
- 対象は約30年:より早期にリタイアして50年取り崩すなら、もっと保守的(3〜3.5%)に考える必要がある
- 米国のデータが前提:米国株が好調だった歴史に基づく。他国・他通貨では結果が変わりうる
- 株式比率が高い前提:おおむね株式50%以上のポートフォリオを想定している
- 定額・機械的な引き出し:相場が悪い年も同じ額を引き出す前提
最大の敵:シーケンス・オブ・リターンズ・リスク
取り崩しフェーズで特に怖いのが「シーケンス・オブ・リターンズ・リスク(収益率の順序リスク)」です。 これは、リタイア直後の数年間に大きな暴落が起きると、資産が想定より早く枯渇しやすくなるという問題です。
積立期は暴落がむしろ「安く買えるチャンス」になりますが、取り崩し期は逆。 下がった資産を取り崩すと元本が大きく削られ、その後相場が回復しても 取り返せる元本が減ってしまうためです。リタイア直前・直後はとくに慎重な配分が求められます。
実データで見る「リタイア年の運」
どれほど効くのか、当サイトの計算エンジンで実測してみます。 全世界株式100%・3,000万円を月10万円ずつ取り崩す同じ条件で、リタイアした年だけを変えると——
- 1990年リタイア(直後に世界的な株安): 資産は一時2,348万円(1992年)まで減少。 その後の回復で30年後には7,602万円まで戻ったが、 道中は「毎月取り崩しながら資産が3分の2に減っていく」時期を耐える必要があった
- 2003年リタイア(回復局面の入口): 資産は一度も初期額を下回らず、22年後には21,433万円に増加
同じルール・同じ配分でも、リタイアの数年の違いで道中の景色はまったく別物になります。 開始年を1年ずつずらした網羅的な検証は4%ルールの実データ検証記事にまとめました。
日本に住む私たちが気をつける点
- 為替リスク:外国資産は円高になると円ベースの価値が目減りする
- 税金:取り崩し(売却益)には課税される。NISAの活用が有効
- 公的年金:年金収入を加味すれば、資産からの取り崩し率は下げられる
シミュレーターで「取り崩し」を検証する
本ツールの「取り崩し(資産活用)」モードを使えば、現在の資産額と毎月(または毎年)の 取り崩し額を設定して、資産がどれくらい持つかをシミュレーションできます。 とくにモンテカルロ機能で表示される「資産枯渇確率」は、 その取り崩しプランがどれくらい安全かを判断する強力な指標です。 取り崩し額や資産配分を変えながら、枯渇確率が十分に低くなる組み合わせを探してみましょう。
※4%ルールはあくまで過去データに基づく経験則であり、将来を保証するものではありません。本記事は投資助言ではありません。